概要
過去との対決や克服のために、誰が、誰を、どのように想起しうるのか? 2005年5月、ベルリンの壁解体後の広大な空間に「ヨーロッパの虐殺されたユダヤ人のための記念碑」が建てられた。しかしそれは最初から激しい論争の中にあった。なぜ「ユダヤ人」だけが記念されねばならないのか、なぜその場所なのか、なぜモニュメントなのか……。厖大な資料から多岐にわたる論争が浮上させた問題群を解読。
目次
I 記念碑論争の経緯と諸問題
1●記念碑論争の前史
1.1 ナチスの想起をめぐる西ドイツの一般的状況
1.2 ゲシュタポ跡地の再発見─記念碑設立運動の具体的契機
2●記念碑建設運動の始まり
2.1 市民運動による最初の呼びかけ
2.2 呼びかけに対する反響
2.2.1 記念碑建設場所をめぐる対立─「財団 テロの地勢学」の設立
2.2.2 記念碑の対象をめぐる対立─シンティー・ロマの批判
3●「ベルリンの壁」の崩壊(一九八九年十一月九日)とドイツ統一による論争の転換
3.1 「ベルリンの壁」の崩壊による記念碑問題の質的転換
3.2 ノイエ・ヴァッへ(戦争と暴力の犠牲者のための記念碑)の改築をめぐる論争とその影響─統一ドイツにおける「戦没者」の国家想起の問題
4●記念碑芸術コンペ
4.1 第一回記念碑芸術コンペ(一九九四年~)
4.1.1 第一回コンペの呼びかけ
4.1.2 コンペの審査結果とその反響
4.1.3 コンペで注目を集めた作品
4.2 第一回コンペの挫折とその後の展開(一九九五年~)
4.2.1 コンペ挫折
4.2.2 三回連続のコロキウム(一九九七年~)
4.3 第二回記念碑芸術コンペ(一九九七年~)
4.3.1 第二回コンペの概要
4.3.2 第二回コンペの開催とそれに対する反響
4.3.3 第二回コンペの審査結果
4.3.4 コンペで注目を集めた作品
4.3.5 コンペの反響とその後の展開
5●コンペ「挫折」後の展開(一九九八年~)
5.1 ヴァルザー─ブービス論争─想起の分離
5.2 さまざまな動き
6●連邦議会の議決に向かって
6.1 記念碑と資料館の併合の提案
6.2 記念碑と資料館の併合案に対する批判
6.3 記念碑と資料館の併合提案に対する既存の記念館からの批判
6.4 戒めの碑(「汝殺す勿れ」)の提案
7●連邦議会の記念碑建設決議
7.1 連邦議会決議までの経緯
7.2 連邦議会議決(一九九九年六月二十五日)
7.3 決議の結果とその分析
II 記念碑の根本的問題─想起の本質とその機能
1●想起の主体─共同想起と国家アイデンティティー
2●想起の客体─犠牲者と加害者
3●想起の方法 ─記念碑の限界
4●想起と芸術 ─ホロコーストの表現(不)可能性
III 記念碑の実現
1●記念碑建設工事開始まで
1.1 記念碑財団の成立
1.2 「記念碑建設を支援する会」による募金キャンペーン─「ホロコーストはなかった」
2●記念碑建設工事の中断と再開 ─ドイツ企業の戦争責任
2.1 概略
2.2 論争の経緯
2.3 工事再開の決定とその反響
2.4 工事再開後になお残る財団内部の対立
3●「情報の場所」の設立
3.1 「情報の場所」の課題と根本構想
3.2 「情報の場所」をめぐる論争
3.2.1 根本理念
3.2.2 「情報の場所」の入り口の言葉─「アウシュヴィッツを二度と再び繰り返すな」
3.3 完成した「情報の場所」とその問題
3.3.1 「名前の部屋」
3.3.2 他の記念館の指示─ポータル機能
3.3.3 記念碑論争の指示
4●完成した記念碑とその問題
4.1 記念碑でのデモや集会の法的規制
4.2 記念碑除幕式
4.3 記念碑の一般公開
4.4 結語
5●共同想起に関わる現在の問題
5.1 他の記念碑建設問題のその後の経緯
5.1.1 シンティー・ロマの記念碑をめぐる論争
5.1.2 ナチスの資料センター「テロの地勢学」(ゲシュタポ跡地)
5.1.3 同性愛者の記念碑
5.2 戦争の共同想起に関わる現在の記念碑問題
5.2.1 犠牲者としてのドイツ人─故郷追放者の記念碑
補論 ワルシャワ・ゲットー跡記念碑とヴィリー・ブラント記念碑
5.2.2 兵役拒否者の記念碑─ハルベの戦没者墓地をめぐって
5.2.3 「加害者」の現場─トプフ&ゼーネ工場跡
5.2.4 日常における記念碑─「躓きの石」
5.3 共同想起をめぐるもう一つの闘い─東独の記念碑
5.3.1 共和国宮殿とベルリン宮殿─想起の入れ替え
5.3.2 フンボルト大学本館のフォイエルバッハ・テーゼ記念碑─記念碑からメタ記念碑への転換
5.3.3 ソ連戦勝記念碑─共同想起の「飛び地」
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