学的自立をめざして様々な角度から切り込む
海外子女教育、帰国子女教育、留学生教育など日本の教育の国際化にともなう諸問題に関する研究を「異文化間教育」として整理・体系化し、学問としての枠組みの構築をめざしさまざまなテーマを提示する。

第1章　異文化間教育学の研究主題と研究の観点（小島　勝）
はじめに
1．研究主題と研究の観点についてのマトリクス
2．研究主題について
3．研究の観点について
4．「研究の観点」間の関係について
5．理論モデルとキーワード

第2章　異文化間教育学の固有性―学問としての自立は可能か―（佐藤郡衛）
1．対象設定と分析枠組みの問題
2．異文化間教育学における「理論」と「実践」
3．異文化間教育学の理論の再構成
4．異文化間教育学の研究方法の明確化
5．異文化間教育学の視点と理念

第3章　異文化間教育学と情報メディア（塚本美恵子）
はじめに
1．研究会での議論
2．授業で利用しているメディア教材調査の実施
3．利用メディア調査の結果
4．「メタ・重層的な視点」と実践の取り組み
5．これまでのメディア関連テーマへの取り組みと今後の課題
おわりに

第4章　異文化間教育学における映像メディアの導入（村田雅之）
はじめに
1．映像メディア導入の3段階
2．既存映像の導入
3．教員による教材制作
4．学生による制作
5．学生による制作を導入する際の留意点
おわりに

第5章　異言語間教育―真なる多言語共生社会の創出を志向する教育―（山本雅代）
はじめに
1．言語教育
2．異言語間教育
おわりに

第6章　異文化間教育学とコミュニケーション研究（徳井厚子）
はじめに
1．これまでの異文化間教育で扱われたコミュニケーション研究について
2．異文化間教育学におけるコミュニケーション研究の課題
3．関係性の再構築とコミュニケーション

第7章　地域社会における異言語間教育の役割と設計（足立祐子）
はじめに
1．日本国内の現状と問題点
2．日本語教育学からの方向性とその限界
3．多文化共生の地域づくりのための3つの提案
4．今後の課題

第8章　異言語間教育における関係性からみた英語教育（井狩幸男）
はじめに
1．人
2．言　　語
3．場　　面
4．脳
5．発　　達
おわりに

第9章　多言語主義のゆくえ―アメリカの場合―（末藤美津子）
はじめに
1．言語使用への制限―英語公用語化運動―
2．言語教育への制限（1）―バイリンガル教育法から英語習得法へ―
3．言語教育への制限（2）―反バイリンガル教育提案―
おわりに

第10章　聴覚障害者のことばと文化を視野に入れた異文化間教育（加藤三保子）
はじめに
1．ろう者と手話
2．聴覚障害児教育の変遷
3．手話とろう者をめぐる最近の動向
4．ろう者のアイデンティティ―手話とろう文化―
5．ろう者と健聴者の共生に向けて
おわりに

第11章　生涯発達におけるアイデンティティ―関係性の視点から―（廿日出里美・小澤理恵子・鈴木一代・塘　利枝子）
1．生涯発達的視点で異文化間教育をとらえることの必要性
2．発達段階の区分と特徴
3．異文化間教育研究における「発達」的観点
4．アイデンティティの諸理論
5．関係性の視点からアイデンティティをとらえるための事例分析
むすび

第12章　多文化・異文化リテラシーにおける「文化」のとらえ方（馬渕　仁）
1．文化をめぐるさまざまな言説
2．多文化主義をめぐる問題
3．アイデンティティ論をめぐる問題
4．今後の展望

第13章　文化概念の再考―アメリカ合衆国の多文化教育の視点から―（松尾知明）
はじめに
1．多文化教育のパラダイム転換―文化多元主義から多文化主義へ―
2．ジャズと文化概念の再考
3．文化概念の再考と異文化間教育
おわりに―異文化間教育研究に示唆するもの―

第14章　異文化間教育学におけるカルチュラル・スタディーズの有効性―「文化」と「アイデンティティ」概念を中心に―（渋谷真樹）
1．異文化間教育学とカルチュラル・スタディーズ
2．カルチュラル・スタディーズにおける「文化」のとらえ方
3．カルチュラル・スタディーズにおける「アイデンティティ」のとらえ方
4．異文化間教育学におけるカルチュラル・スタディーズの活用
5．異文化間教育学におけるカルチュラル・スタディーズの有効性と限界

第15章　本質主義をめぐるジレンマへの対峙―異文化間教育研究とジェンダー研究における共通の課題―（西尾亜希子）
はじめに
1．異文化間教育研究における研究アプローチの変化
2．ポストモダン・フェミニズムの台頭と反本質主義的思想
3．異文化間教育における「ジェンダー」についての一考察
おわりに

第16章　在日朝鮮人教育研究と異文化間教育学の関連について（出羽孝行）
はじめに
1．異文化間教育研究の視点から在日朝鮮人教育をとらえる必要性
2．「民族教育」と「在日朝鮮人教育」
3．日本の学校における在日朝鮮人教育
4．朝鮮人学校における朝鮮人と日本人
5．在日朝鮮人，日本人とは誰か？
6．在日朝鮮人教育と異文化間教育学
おわりに

第17章　留学生アドバイジングの実践プロセスとその課題（白土　悟）
序
1．留学生アドバイジングの全体像
2．異文化間カウンセリングとアドバイジング
3．留学生問題への対応プロセス
4．ケースを考える
むすび