概要
形成とは「(作者が)作品を形づくること」である。
なかでも、構想・構成などを解明することは、
従来の研究において次第に忘れ去られてきたのではないか。
今、先行の構想論の成果を批判的に継承しつつ、
表現--構想・構成--〈作者〉という回路を
より豊かに明確に押さえていくことが求められている。
〈作者〉の表現の意味への遡源を考え抜いた、平安朝物語形成論。
目次
はじめに--本書の立場と考察の要点
第一篇 前期作り物語の形成をめぐって
【1.『竹取物語』】
第一章 『竹取物語』の帝物語--『漢武帝内伝』からの離陸
第二章 かぐや姫と李婦人
第三章 『竹取物語』の起源譚的結末--〈今〉は〈昔〉の男の心
【2.『伊勢物語』】
第四章 『伊勢物語』の初段と「登徒子好色賦」--「いちはやきみやび」の物語の始動
第五章 『伊勢物語』第九段の三河の国の物語--『楚辞』「湘君」「湘夫人」の引用
第六章 『伊勢物語』百二十三段と『詩経』「●之奔奔」
第二篇 作り物語の構想枠としての〈季節観〉
第二篇の考察の課題
【3.春】
第七章 『うつほ物語』の春物語
第八章 『源氏物語』の春物語
【4.夏】
第九章 『うつほ物語』の夏物語
第十章 『源氏物語』の夏物語
【5.秋】
第十一章 『うつほ物語』の秋物語
第十二章 『源氏物語』の秋物語
【6.冬】
第十三章 『うつほ物語』の冬物語
第十四章 『源氏物語』の冬物語
【7.構想枠としての〈季節観〉をめぐって】
第十五章 「女は春をあはれぶ」--『源氏物語』若菜巻と『詩経』引用
第十六章 宇治十帖の構想の方法--匂宮の春と薫の秋
第十七章 『石清水物語』の男主人公と四季--宇治十帖の継承と変容
第三篇 『源氏物語』の形成をめぐって
【8.正篇の物語】
第十八章 桐壺更衣物語と『うつほ物語』--始まりとしての死
第十九章 『源氏物語』の始まり--「もの心細し」をめぐって
第二十章 夕顔物語冒頭部にうかがわれる長篇的射程--「かづら」としての夕顔
第二十一章 夕顔巻の神話的想像力--『源氏物語』の基底的構図
第二十二章 少女巻の形成の方法--『源氏物語』の形成の方法と人物造型
第二十三章 玉鬘物語の構想--『詩経』王風「■■」の引用
【9.続篇の物語】
第二十四章 「紫上の遺言」以後--宇治の物語への動き
第二十五章 匂兵部卿巻の薫--柏木と夕霧の輻輳
第二十六章 紅梅巻--橋姫物語の構造的支柱
第二十七章 竹河巻の薫物語--夕霧の物語の影
第二十八章 中君の造型と役割--中君入水構想はあったか(一)
第二十九章 中君・浮舟物語構想の形成--中君入水構想はあったか(二)
第三十章 中君物語の展開
第三十一章 宇治の大君の模索--自立的人生の光と影
第四篇 後期作り物語の形成をめぐって
【10.『狭衣物語』】
第三十二章 『狭衣物語』の形成をめぐって
初出一覧
あとがき
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