ゴム材料ナノコンポジット化と配合技術
概要
21世紀のキーテクノロジーとして,世界の開発競争が激化しているナノテクノロジーの中で,本書はナノコンポジットと配合技術にスポットを当て,ナノテクの活用を浮き彫りにした。
ゴム製品は一般に配合,成形,加硫の3工程で製造され,このうち配合は成形,加硫の全行程に影響を及ぼす重要な材料設計である。この配合設計も最近では微視的になり,ナノコンポジットへと新たな展開を進んでいる。
2001年10月K.C.リサーチ代表中條澄編集委員長として「ポリマー系ナノコンポジットの最新技術と応用」がシーエムシー出版から上梓され,好評であった。本書はこれに続き,開発のスピードが加速しているゴム材料のナノコンポジットと配合技術について,最新の情報と配合設計を提供するものである。
カーボンブラックの複合は配合技術では比較的古くから開発されており,最近では数10nmオーダーのシリカ,クレー,炭酸カルシウムなどをゴム材料と組み合わせ,より性能が向上している。また,これらを用いた自動車ゴム材料や実用的機能を備えたエコマテリアルなどが検討されている。
本書は現在,第一線で活躍している多数の執筆者の協力を得て,広範囲にわたるゴム材料のナノコンポジットと配合技術全般をカバーすることが出来たと考えている。配合技術はサイエンスよりアートに近いが,本書を一読することにより,最近の情報と動向を把握することができ,今後の発展に役立つものと考えている。さらに,本書は配合を基礎から見直し,ナノコンポジットによる高機能・高性能化を図る配合設計を目的とした。
本書は巻頭でナノコンポジットと配合に関する全般的な現状を展望し,配合設計とナノコンポジット編で使用原料と配合剤の設計方法が詳しく解説されている。次にゴム系ナノコンポジット編の材料編では個々の材料設計が詳細に説明されてる。あとがきでは特に今後の発展が期待されているナノコンポジットと配合技術について触れた。
ナノの視野から配合設計をも見直し,ナノコンポジットを解明するための本書が現場の技術者,研究者の方々にお役に立てればご幸甚である。
2003年7月 東京工業大学 教授 西敏夫
目次
第1章 ゴム配合とナノテクノロジー(Kohjiya Shinzo,妹尾正宣)
1. はじめに
2. ゴム材料の動向
3. ナノテクノロジー急浮上の背景
4. ナノテクノロジーとゴム
4.1 「ナノテクノロジー」の定義
4.2 ナノコンポジット
4.3 フィラーを中心とした配合技術
4.4 ゴム系ナノコンポジットの新しい方向性
5. ナノテクノロジーの新展開へ
6. ソフトマテリアルの行方
【配合設計とナノコンポジット 編】
第2章 ポリマーと配合材料(竹村泰彦)
1. はじめに
2. 配合設計の位置付けと目的
3. 配合設計の要点
4. ナノテクノロジーの観点から見たポリマーと配合設計
5. 無機フィラーのナノ分散系
5.1 CBのナノ分散系
5.2 シリカのナノ分散系
5.3 クレイのナノ分散系
5.4 その他フィラーのナノ分散系
6. ポリマー,有機フィラーのナノ分散系
6.1 ポリマーブレンドにおけるドメインポリマーのナノ分散系
6.2 有機フィラーのナノ分散系
6.3 熱硬化性樹脂へのゴムのナノ分散系
6.4 熱可塑性樹脂への特殊TPEのナノ分散系
7. おわりに
第3章 HNBRを中心とした配合設計(細谷潔)
1. HNBRの特徴
2. HNBRの加硫系
(1) HNBRの硫黄加硫
(2) HNBRの有機過酸化物加硫
3. HNBRとカーボンブラック(補強性)
4. HNBRと白色系充てん剤
5. HNBRと可塑剤
6. HNBRの高強度化
第4章 加硫系薬剤と配合設計(小林幸夫)
1. はじめに
2. 配合剤
2.1 加硫剤
2.1.1 硫黄
2.1.2 4,4'-ジチオジモルホリン
2.1.3 チウラムポリスルフィド
2.1.4 2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール
2.1.5 過酸化物
2.1.6 キノンジオキシム
2.1.7 アルキルフェノール樹脂
2.1.8 アミン化合物
2.1.9 金属酸化物
2.1.10 その他の加硫剤
2.2. 加硫促進剤
(1) アルデヒドアンモニア類
(2) アルデヒドアミン類
(3) グアニジン類
(4) チオウレア類
(5) チアゾール類
(6) スルフェンアミド類
(7) チウラム類
(8) ジオカルバミン酸塩類
(9) キサントゲン酸塩類
3. 配合設計
3.1 加硫剤の選択基準
(1) 硫黄架橋
(2) 過酸化物架橋
(3) キノイド架橋
(4) 樹脂架橋
3.2 加硫促進剤の選択基準
(1) 加硫性能
(2) 架橋物性
(3) 耐熱性
(4) 分散性
(5) ブルーム性
(6) 着色性,汚染性
(7) 形状
(8) 衛生性
3.3 各種ゴムにおける加硫促進剤の使い方
4. おわりに
第5章 ゴム用シランカップリング剤と配合設計(北川紀樹,山田聿男,高田十志和)
1. はじめに
2. シランカップリング剤の種類と構造
3. タイヤ用途開発
3.1 タイヤ用シランカップリング剤の製造法
3.1.1 CA合成の従来法
3.1.2 CAの新製造法
3.2 シランカップリング剤の構造とゴム物性
3.3 シリカの物性とシランカップリング剤の作用機構
4. CA添加系コンパウンドの加工性能と物性
4.1 コンパウンド中の揮発分の影響
4.2 練り温度の影響
4.3 亜鉛華,ステアリン酸およびポリエチレングリコール(PEG)の影響
4.4 各種ゴムにおけるCAの効果
5. おわりに
第6章 白色フィラーと配合設計(児玉総治)
1. 白色フィラーの特徴
2. 白色フィラー配合の基本的考え方
3. 練り生地の性質と配合
3.1 練り生地粘度
3.2 加硫特性
4. 加硫ゴムの物性と配合
4.1 ゴム補強効果
4.2 耐老化性
4.3 導電性
4.4 熱伝導性
4.5 難燃性
5. おわりに
第7章 不溶性硫黄と配合設計(髙下勝滋)
1. はじめに
2. 硫黄の熱的状態変化
3. 固体状態の硫黄同素体
4. 不溶性硫黄の構造
5. X線構造解析
6. 不溶性硫黄の構造と熱安定性
7. 不溶性硫黄の熱的特性
8. 配合設計
8.1 各メーカーの商品とグレード・特徴
8.2 不溶性硫黄を配合するにあたって
(1) 配合量
(2) ゴムへの分散性
(3) 混練温度について
(4) 加硫特性に及ぼす影響
(5) ブルーミング防止効果
(6) ビン・スコーチ防止効果
9. おわりに
第8章 カーボンブラックの特性とその機能(駒井泰美)
1. はじめに
2. 構造
3. 表面化学
4. カーボンブラック特性とその測定法
5. 配合別ゴム物性
6. 凝集体の形態
7. 水素量
8. おわりに
第9章 シリカ/カーボン複合フィラーと配合設計(海藤博幸)
1. はじめに
2. 特許に見るSCC
3. SCCの製法
4. SCCのキャラクタリゼーション
5. SCC配合ゴムの物理特性
6. おわりに
第10章 難燃剤と配合設計(西沢仁)
1. まえがき
2. 難燃性ナノコンポジット材料と難燃化機構
3. 難燃性ナノコンポジット材料の開発と難燃特性
3.1 EVA系ナノコンポジット
3.2 その他難燃性ナノコンポジット高分子材料
4. ナノコンポジット難燃材料の今後の動向
第11章 相溶化剤と配合設計(杉浦基之)
1. はじめに
2. ポリマーアロイと相溶化剤の役割
3. 相溶化剤の種類
4. 非反応型相溶化剤
5. 反応型相溶化剤
6. 市販の相溶化剤
7. エラストマー系アロイと相溶化剤
8. おわりに
第12章 加工助剤と配合設計(秋葉光雄)
1. はじめに
2. 加工助剤と基本特性
2.1 高級脂肪酸系(RCOOH)
2.2 脂肪酸エステル系(RCOOR)
2.3 脂肪酸金属系[(RCOO)nMe]
2.4 脂肪酸アミド系(RCONH2)
2.5 炭化水素系(CmHn)
2.6 アルコール系
2.7 フッ素含有系
2.8 シリコーン含有系
2.9 脂肪族,芳香族などの樹脂系
2.10 混合系
3. 加工工程における加工助剤の性能
3.1 可塑化
3.2 分散性
3.3 滑性
3.4 熱安定性
3.5 防着性
3.6 その他
4. 加工助剤のゴムへの応用
4.1 NR
4.2 SBR
4.3 BR
4.4 NBR
4.5 CR
4.6 IIR(ブチルゴム)
4.7 EPDM
4.8 CSM(クロルスルホン化ポリエチレン)
4.9 ACM(アクリルゴム)
4.10 CO,ECO(エピクロルヒドリンゴム)
4.11 FKM(フッ素ゴム)
5. 加工助剤の将来
【ゴム系ナノコンポジットの材料 編】
第13章 ゾル-ゲル法によるゴム/シリカ系ナノコンポジットと配合(池田裕子)
1. はじめに
2. 未架橋ゴムへのin situシリカ配合
2.1 未架橋ゴムマトリックス中でのin situシリカ配合
2.2 ゴムの有機溶液中でのin situシリカ配合
2.3 ゴムラテックス中でのin situシリカ配合
3. ゴム架橋体中でのin situシリカ配合
4. ゾル-ゲル反応によるネットワークス化に伴うin situシリカ配合
5. おわりに
第14章 動的架橋型熱可塑性エラストマー(田坂道久)
1. はじめに(動的架橋の必要性とその効果)
2. PP/SBC系の材料設計
3. PP/SBC系の改良
3.1 動的架橋反応
3.2 動的架橋グラフト反応
3.3 フィラー補強
4. PP/SBC系の改良事例
4.1 耐油性改良
4.2 耐熱性改良
4.3 対傷付き性改良
5. PP/SBC系の応用
5.1 難燃化
5.2 発泡
6. PP/SBC系の成形性
6.1 射出成形
6.2 押出成形
6.3 ブロー成形
6.4 シート成形
6.5 スラッシュ成形
第15章 医療材料の設計(依田隆一郎,林壽郎)
1. はじめに
2. 医療材料に要求される諸特性
2.1 安全性
2.2 機能性
2.3 生体適合性
3. 医療材料の安全性
3.1 材料の安全性
3.2 ゴム薬品の安全性
3.3 材料の生体内劣化
3.4 滅菌ガスの安全性
4. 医療材料別配合設計
4.1 シリコンゴム
4.2 ポリウレタンゴム
4.3 ポリオレフィンゴム
4.4 熱可塑性エラストマー
4.5 軟質ポリ塩化ビニル
4.6 ポリマーアロイ
5. 将来展望
第16章 耐熱性と材料設計(平田靖)
1. 架橋ゴムの耐熱性
2. 熱による物理的構造変化
3. 熱による化学的構造変化
3.1 ゴム分子主鎖の切断と構造変化
3.1.1 原料ゴムの選定
3.1.2 老化防止剤の選定
3.2 架橋構造の切断と構造変化
3.2.1 架橋構造の種類
3.2.2 硫黄架橋について
3.2.3 混成架橋および非硫黄架橋
第17章 配合と金型設計(モールド汚れ)(山口幸一)
1. はじめに
2. ゴム用金型の汚染
3. 金属汚染の防止
4. ゴム,配合剤による防止
5. 金型による防止
6. ナノテクノロジーによる改善
7. おわりに
第18章 接着と配合設計(山口幸一)
1. はじめに
2. ゴム系接着剤
2.1 ゴム系溶剤形接着剤
2.2 ゴム系水性形接着剤
2.3 ホットメルト形接着剤
3. 配合と接着性
4. ナノテクノロジーの活用
5. おわりに
第19章 TPEと配合設計(秋葉光雄)
1. 配合設計の要点
2. ポリマーの選び方
3. 軟化剤(可塑剤)の選び方
3.1 ベースエラストマーの選定
3.2 樹脂の配合
3.3 可塑剤の配合
3.4 安定剤の配合
3.5 溶剤
4. 老化防止剤(安定剤)の選び方
5. 充填剤の選び方
6. 短繊維の選び方
7. 発泡剤の選び方
8. ブレンド(動的架橋)の選び方
9. 相溶化剤の選び方
10. 物性の向上と配合
10.1 耐熱性の向上
10.2 強度の向上
10.3 圧縮永久ひずみの改良
10.4 耐油性の向上
10.5 相溶化剤による改質
10.6 傷付き性の改良
10.7 難燃性の向上
あとがき(Kohjiya Shinzo)
こんにちは ゲスト様
- 検索機能で欲しかった書籍を
- 書籍・雑誌検索
- アカデミック版などお得に
- ソフトウェア
- 記念品やお土産に最適
- 岡山大学オリジナルグッズ
- お得で旬な商品をご紹介
- メールニュース掲載商品
- 大学生協の医療書専門店
- IKEI メディカルブックストア