概要
総力戦体制下の日本で、グラフ雑誌はその記録性・報道性とプロパガンダの狭間で何を表現したのか。「FRONT」「NIPPON」「アサヒグラフ海外版」「太陽」「SAKURA」などを素材に、聖戦や大東亜共栄圏構想を視覚化しようとした宣伝戦の実相を照らし出す。
目次
はじめに
第1章 「報道写真」とグラフ雑誌の黎明
1 「報道写真」に至るまで
2 第一次日本工房とそれぞれの「報道写真」
3 朝日新聞社の「報道写真」
第2章 対外向けグラフ雑誌事始め――第一期:柳条湖事件の勃発―一九三四年末
1 国家による対外宣伝の開始と対外向けグラフ雑誌の創刊
2 概略的な全体像――第一期「アサヒグラフ海外版」
第3章 “新たなる日本”の表象の模索――第二期:一九三五年―日中全面戦争勃発
1 観光宣伝・文化宣伝への傾斜の背景
2 和のエキゾチシズム――第二期「アサヒグラフ海外版」
3 日本文化論の視覚化――第二期「NIPPON」
第4章 日中全面戦争の「意味」の可視化――第三期:日中全面戦争勃発―一九三九年半ば
1 日中全面戦争の勃発と写真宣伝
2 「アサヒグラフ海外版」の「思想戦」――第三期「アサヒグラフ海外版」1
3 戦時下の国情宣伝と“銃後の国民”――第三期「アサヒグラフ海外版」2
4 出先陸軍の宣伝と日本工房――第三期「NIPPON」
第5章 狭隘化する「報道写真」とグラフ雑誌――第四期:一九三九年半ば―アジア・太平洋戦争開戦
1 評論雑誌化する対外向けグラフ雑誌
2 日米開戦前夜の写真界とその周辺
第6章 アジア・太平洋戦争と東南アジア向けグラフ雑誌――第五期:アジア・太平洋戦争開戦―敗戦
1 アジア・太平洋戦争と南方軍政
2 南方向け宣伝工作とグラフ雑誌の諸相
3 東方社と「FRONT」
第7章 “東亜の盟主”のグラフィックス――第五期:アジア・太平洋戦争開戦―敗戦
1 日本軍のイメージアップ
2 日本の盟主性
3 大東亜共栄圏構想の視覚化
終章 それぞれの再出発
おわりに
索引
▼著者プロフィール
井上 祐子(イノウエ ユウコ)●著…1963 年、大阪府生まれ。立命館大学国際関係研究科博士前期課程修了。京都外国語大学非常勤講師。専攻は日本近・現代メディア史。論文に「報道技術研究会の「技術」と作品」(「メディア史研究」第7号)、「太平洋戦争下の報道技術者」(「立命館大学人文科学研究所紀要」第75号)、「「国家宣伝技術者」の誕生」(「年報日本現代史」第7号)、「戦時下の漫画」(「立命館大学人文科学研究所紀要」第81号)、「“東亜の盟主”のグラフィックス」(「立命館大学人文科学研究所紀要」第86号)など。
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