概要
免疫学の正統的な入門書として定評を得ているが、本領域の急速な進歩にあわせて今回も最新の知見をふまえて改訂した。難解な免疫学を図表を多用して平易な文章でわかりやすく解説し、専門用語には簡単な解説を添え、免疫学特有の概念には卑近な例をひいて説明している。臨床との結びつきに留意し、検査、診療法、病態の理解に必要な免疫学の知識を盛り込んだ。また各章の冒頭に要約をかかげ、知識の整理をはかっている。これから免疫学を学ぶ方々に、最高のテキストとしてお勧めする。
目次
1 免疫とは―免疫系概説―
1.免疫系の生体における役割 1
2.どうやって“非自己”を識別するか 1
3.無数に近い種類の抗原レセプターをどうやって用意するのか 4
4.“非自己”の認識から“非自己”の排除へ 5
5.反応の増幅と制御 7
6.リンパ球にはいくつかの異った性質のグループがある 8
7.“非自己”の認識と排除の原始的な機構(自然免疫) 10
8.“非自己”の排除には“自己”の犠牲も伴う―アレルギーとの関係 12
9.免疫と臨床 12
2 抗体についての基礎知識
■要 点…14
1.抗体とはどのようなものか 16
2.抗原とはどのようなものか 18
3.抗体の分子構造 19
4.免疫グロブリン 22
5.免疫グロブリン各クラスの特性 26
6.血清免疫グロブリン値と疾患 35
Advanced Knowledge●
①抗原と抗体との特異的結合 37
②FcRnの役割 37
3 抗体のもたらす反応とそれを利用した検査
■要 点…38
1.凝集反応 41
2.赤血球凝集反応 41
3.菌凝集反応 43
4.受身凝集反応 44
5.沈降反応 44
6.ゲル内沈降反応 46
7.補体結合反応 47
8.免疫溶菌反応 49
9.細胞傷害試験 49
10.免疫粘着反応 50
11.中和試験 50
12.標識抗体法 52
13.ラジオ イムノアッセイ (RIA) 54
14.エンザイム イムノアッセイ (EIA) 57
15.その他のイムノアッセイ 58
16.ウエスタン ブロット法 59
17.免疫画像診断 60
4 抗体を利用した疾患の予防と治療
■要 点…61
1.抗体をどのようにして入手するか 63
2.ウイルス感染症の発症予防 65
3.細菌感染症の治療 66
4.無・低γグロブリン血症の感染予防 67
5.血液型不適合妊娠における感作の予防 68
6.がんの治療 68
7.血小板減少性紫斑病の治療 69
8.自己免疫病,免疫複合体病の治療 69
9.川崎病の治療 71
10.免疫抑制療法 71
11.アレルギーの治療 71
5 リンパ球の働き
■要 点…72
1.体液性免疫と細胞性免疫 75
2.T細胞の発生 77
3.T細胞の抗原認識 78
4.T細胞の機能 80
5.B細胞の発生と機能 91
6.K細胞 91
7.NK 細胞 92
8.NKT 細胞 99
9.LAK 細胞 101
10.リンパ組織 102
Advanced Knowledge●
①ヘルパーT細胞によるキラーT細胞の補助 110
②T細胞による細胞傷害の機序 110
③Th1細胞とTh2細胞の分化 113
Th1細胞,Th2細胞の機能 114
Tr1細胞とTh3細胞 114
Th17細胞の分化と機能 114
Th1細胞・Th2細胞・Tr1細胞・Th17細胞の誘導と抗原提示細胞 115
Th1細胞,Th2細胞の性状の違い 117
④樹状細胞の分化 118
⑤NK細胞のサブセット 120
⑥NK細胞表面のレセプター 120
NK細胞を活性化するサイトカイン 123
⑦古典的NKT細胞の由来と機能 123
⑧腸管リンパ組織における免疫応答 125
⑨末【梢】リンパ組織の器官形成 126
⑩粘膜免疫系 127
⑪リンパ球の動態とケモカイン・接着分子 128
6 細胞表面機能分子―接着分子など―
■要 点…131
1.細胞表面分子の CD 表示 132
2.接着分子の種類 132
3.接着分子の役割 150
Advanced Knowledge●
①ケモカインによる接着分子の変化 156
②接着分子によるT細胞の活性化 156
7 B細胞の分化と機能発現
■要 点…157
1.免疫グロブリン可変領域遺伝子の再編成 159
2.免疫グロブリンのクラススイッチ 163
3.B細胞系の分化過程 167
4.自己反応性B細胞の除去 170
5.B細胞の由来と種類 171
6.B細胞の活性化 172
7.B細胞の増殖・分化へのT細胞の関与 174
8.抗体産生 179
Advanced Knowledge●
①免疫グロブリン可変領域遺伝子再編成の機序 184
②免疫グロブリン可変領域遺伝子の体細胞突然変異の機序 185
③免疫グロブリン対立遺伝子排除 186
④免疫グロブリンのクラススイッチ機構 186
⑤pre-B細胞レセプターの役割 188
⑥B細胞系への分化と転写因子 189
⑦自己反応性B細胞がアネルギーとなる機序 190
⑧B1a細胞とB1b細胞の相違 191
⑨B細胞活性化の細胞内シグナル伝達 191
⑩リポ多糖類によるB細胞の活性化 195
⑪細胞内シグナル伝達にかかわるチロシンキナーゼ群とアダプター分子 195
⑫Blys(BAFF)のB細胞への作用 196
⑬表面免疫グロブリンと分泌される免疫グロブリン 197
⑭胚中心におけるB細胞の反応 197
⑮濾胞BヘルパーT細胞 199
⑯形質細胞・記憶B細胞への分化 200
⑰辺縁帯B細胞の役割 201
8 T細胞の分化と機能発現
■要 点…203
1.T細胞レセプター(T細胞抗原レセプター) 206
2.T細胞の抗原認識 209
3.T細胞の活性化 213
4.抗原の処理と提示(抗原提示細胞) 220
5.T細胞の分化過程 228
6.T細胞の分化と胸腺 233
7.T細胞の動態 240
Advanced Knowledge●
①T細胞レセプターの多様性の形成 243
②ヒトT細胞レセプター多様性の実測値 243
③脂質抗原のCD1分子による提示とそれに対するT細胞の応答 244
④γ64T細胞の抗原認識 245
⑤T細胞レセプターとリガンドの結合 246
⑥T細胞の活性化とシグナル伝達およびその制御 246
⑦T細胞の活性化とGEM/raft 252
⑧共刺激なしに抗原と反応したT細胞がアナジー(不応状態)に陥る機序 253
⑨T細胞レセプターからのシグナルによる細胞内骨格の機能誘導 254
⑩T細胞レセプターからのシグナルによるインテグリンの接着能増強 254
⑪樹状細胞の成熟と性状の変化 255
⑫抗原提示における樹状細胞とT細胞の相互作用 256
⑬樹状細胞の抗原物質の取り込みおよび成熟とパターン認識レセプター 257
⑭T細胞が活性化されるかトレランス(不応状態)になるかと樹状細胞 257
⑮抗原の処理と提示の機序 258
⑯プロテアソームの構造 261
⑰cross presentationの機序 261
⑱MHCクラスⅡの発現とCⅡTA 263
⑲免疫学的シナップス 264
⑳樹状細胞が産生する活性型ビタミンとリンパ球のホーミングおよびレギュラトリーT細胞の誘導 265
21 T細胞の分化とNotchレセプター,E蛋白,Id蛋白,転写因子 266
22 T細胞のCD4+,CD8+への分化とMHCクラスⅡ/MHCクラスⅠ拘束性 267
23 Innate T細胞 268
24 胸腺におけるT細胞の動態とケモカイン・接着分子 268
25 胸腺T細胞における正の選択・負の選択とT細胞レセプターからのシグナル 269
26 γ64型T細胞の機能 270
27 CD8+メモリーT細胞の生存とキラーIg様レセプター 270
28 皮膚へ侵入した抗原に対するT細胞の反応 271
29 ナイーブT細胞とメモリー(記憶)T細胞 272
9 リンパ球の検査
■要 点…275
1.リンパ球系の状態の把握 277
2.リンパ球亜群の測定 277
3.T細胞サブセット 279
4.T細胞のクロナリティ 281
5.リンパ球の機能検査 282
6.特定抗原に対するリンパ球の感作の有無の測定 288
10 補体とその働き
■要 点…289
1.補体とは 290
2.活性化補体の作用 291
3.補体の活性化 295
4.活性化補体の不活化 299
5.補体レセプター 302
6.補体の産生と消費 304
11 サイトカインとその働き
■要 点…306
1.インターロイキン 310
2.TNF(腫瘍壊死因子) 335
3.インターフェロン (IFN) 338
4.その他のリンホカイン 341
5.TGF-β 342
6.細胞増殖因子 344
7.オステオポンチン 345
8.BAFF(Blys)・APRIL 345
9.白血球遊走にかかわるサイトカイン(ケモカイン) 345
10.造血に関与するサイトカイン 351
11.サイトカインのレセプター 353
12.サイトカインの治療への応用 354
Advanced Knowledge●
①IL-1β,IL-18の分泌とinflammasome 356
②IL-2レセプターからのシグナル伝達 356
③サイトカインによるリンパ球の生存維持 357
④IL-10によるT細胞・樹状細胞・マクロファージの抑制 357
⑤IFNの抗ウイルス作用 358
⑥TGF-βレセプターからのシグナル伝達 358
⑦細胞の遊走とケモカインレセプターシグナル 359
⑧サイトカインレセプターからのシグナル抑制機構 359
12 食細胞―好中球とマクロファージ
■要 点…362
1.好中球の貪食作用 364
2.好中球の殺菌物質 370
3.好中球による組織傷害 373
4.マクロファージとその働き 373
5.マクロファージの活性化 381
6.マクロファージの多様な機能 386
Advanced Knowledge●
①食細胞のFcγレセプターを介する活性化 389
②細胞質顆粒内容の放出とSNARE 390
③細胞の種類とToll様レセプター 391
④細胞質のパターン認識レセプター 391
⑤LPSによるマクロファージの活性化 392
⑥各TLRからのシグナル伝達 394
⑦マクロファージ・樹状細胞活性化の制御 395
⑧DAMPsと炎症反応 398
13 感染防御免疫機構
■要 点…399
1.局所免疫 402
2.ウイルスの排除 403
3.ウイルスの拡散の阻止 411
4.ウイルス感染の予防 412
5.クラミジアの防御 414
6.化膿菌の防御 415
7.細胞内寄生性細菌,真菌の防御 418
8.寄生虫の防御 425
9.感染防御における自然免疫と獲得免疫 427
10.感染症診断のための免疫学的検査 429
Advanced Knowledge●
①皮膚から侵入してくる微生物に対する免疫応答 432
②ウイルス核酸による樹状細胞,マクロファージの活性化と細胞内核酸感知分子 433
③heterologous immunityとウイルス感染に対する免疫応答 434
④ウイルスの免疫回避機構 434
⑤アジュバントの作用機序 438
⑥細菌DNA CpG配列のアジュバント作用 439
⑦マスト細胞の感染防御における役割 439
⑧腸管粘膜における共生菌との共存と病原菌との戦い 440
⑨細菌の免疫回避機構 441
⑩原虫の免疫回避機構 444
⑪蠕虫の免疫回避機構 445
14 免疫不全
■要 点…446
1.免疫不全とは 449
2.免疫不全と感染 449
3.免疫不全症の成因 453
4.原発性免疫不全症の主な病型 454
5.免疫不全症の治療 472
6.免疫不全症の検査 473
7.好中球異常症 476
8.好中球機能検査 482
9.好中球異常の治療 483
10.補体欠損症 483
11.続発性免疫不全症 484
Advanced Knowledge●
①副腎ステロイドの免疫抑制作用の機序 491
②ストレスによる免疫機能の変化 492
15 免疫応答の制御および免疫トレランス
■要 点…493
1.抗イディオタイプ抗体 495
2.免疫制御T細胞 498
3.T細胞以外の免疫制御細胞 503
4.免疫グロブリンのクラス特異的サプレッサーT細胞 504
5.Fcレセプターを介する免疫抑制 504
6.細胞死による抑制 505
7.抑制シグナルを送る表面分子 507
8.シグナル伝達制御分子 511
9.神経ペプチドによる抑制 512
10.miRNAによる制御 512
11.免疫トレランス 512
12.自己抗原に対して免疫トレランスが成立しやすい理由 520
Advanced Knowledge●
①CD4+ CD25+ Foxp3+ レギュラトリーT細胞の性質 520
②免疫機能とアポトーシス制御分子Bcl-2ファミリー 523
③B細胞の活性化とアポトーシス 523
④神経ペプチドによる炎症と免疫反応の抑制 524
⑤活性化かトレランスかを決定するシグナル 524
⑥腸管免疫における能動応答かトレランス誘導かの岐路 525
16 アレルギー
■要 点…526
1.Ⅰ型アレルギー 529
2.Ⅰ型アレルギーの検査と治療 544
3.Ⅱ型アレルギー 546
4.Ⅲ型アレルギー 551
5.免疫複合体の測定 555
6.Ⅳ型アレルギー 556
Advanced Knowledge●
①FcεレセプターⅠの架橋によるマスト細胞の活性化 561
②TSLP・IL-18・IL-33とアレルギー 563
③アレルギー発症の個人差 564
④遅発喘息反応と気道リモデリングにおける好酸球とT細胞の関与 565
⑤抗原物質中のプロテアーゼとアレルギーの誘導 566
⑥アレルギーの研究段階の治療 567
17 自己免疫現象と自己免疫疾患
■要 点…568
1.自己免疫と自己免疫疾患 570
2.自己免疫の成因 571
3.臓器特異的自己免疫疾患 584
4.抗核抗体 591
5.全身性自己免疫疾患 594
6.自己免疫疾患の治療 600
Advanced Knowledge●
①前眼房における免疫抑制の機序 601
②SLEの病態とⅠ型インターフェロンおよびDAN・抗DNA抗体免疫複合体 601
③自己免疫疾患の免疫学的治療の試み 602
18 輸血と臓器移植
■要 点…606
1.血液型 611
2.輸血反応 619
3.血液型不適合妊娠 619
4.組織適合抗原 620
5.HLA 抗原の決定法(タイピング) 625
6.拒絶反応の機序 627
7.移植細胞対宿主反応 631
8.移植拒絶反応の抑制 632
9.各臓器の移植 634
10.免疫応答遺伝子と組織適合抗原 638
11.HLA 抗原と病気の発症危険率 640
12.血液型,組織適合抗原以外の同種抗原 642
Advanced Knowledge●
①NK細胞による同種骨髄細胞の拒絶 645
②移植片対白血病効果 645
③研究段階の移植拒絶反応抑制法 645
19 腫瘍と免疫
■要 点…647
1.腫瘍に対する免疫は存在するか 649
2.腫瘍関連抗原 649
3.抗腫瘍免疫のメカニズム 651
4.抗腫瘍免疫が回避されてしまう機序 657
5.腫瘍の免疫療法 663
Advanced Knowledge●
①腫瘍関連抗原の同定法 672
②腫瘍関連抗原の提示とストレス蛋白 672
③腫瘍による樹状細胞の分化抑制と抗腫瘍免疫の阻害 672
20 生殖と免疫
■要 点…673
1.胎児の免疫学的拒絶(流産)の阻止機構 674
2.原発性習慣性流産 679
3.妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症) 680
4.胞状奇胎 681
5.抗精子抗体と不妊 681
6.抗卵透明帯抗体と不妊 682
7.自己免疫性卵巣炎,精巣炎と不妊 683
8.母親からの抗体による児の疾患 683
9.児のリンパ球の侵入による母の病気 684
10.妊婦の免疫機能 685
21 免疫系の発達と老化
■要 点…686
1.免疫系の系統発生 687
2.ヒトにおける免疫系の個体発生 691
3.免疫系の老化 698
附.遺伝子の発現機構―遺伝子の転写と翻訳― 702
和文索引…705
欧文索引…713
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