概要
D・H・ロレンスを文学人類学的視点から読み解く。
目次
序章 読むことの倫理―「作家のモラル」と「物語のモラル」
1 「意味の過剰性」と作家の固有名
2 神的暴力、コムニタス、構成的権力、普遍的言説そして無名性へ
3 記号過程―権力の生成と解体のメカニズム
4 存在感―根源的と習慣的
5 存在感、存在観、実在感そして無名性へ
6 単独者
7 無場所を求める単独者―『死んだ男』とユートピア
第一章 ロレンスの偽神学―自我を呪縛/解縛する言説
1 ハロルド・ブルームの〈生-政治〉
2 ロレンスの霊魂論―soul,spirit,bodyをめぐって
3 三位一体論―「トマス・ハーディ研究」と『息子たちと恋人たち』への「序文」
4 四極構造―『無意識の幻想』の「聖霊」論
5 呪縛する記号過程とそれからの開放―三極構造と四極構造
6 「人間と機械」と「福音書的動物」を読む
7 序文「現在の詩」の意味するもの
第二章 ロレンスの性愛の神秘主義
1 性愛の否定神学
2 性愛その儀礼の過程
3 『みろ、俺たちは生き延びた』―性愛の神秘主義の確立
4 『息子たちと恋人たち』―ポール、ミリアム、クララ
5 「非人格的愛」の方へ―『虹』の三つの性愛の形
6 「どこにもない」が「どこにでもある」―アーシュラとバーキンの性愛の否定神学
7 「情欲の純化の諸段階」―コニーとオリバーの場合
第三章 言説の政治学―階級、民主主義、ファシズム、ポストコロニアリズム
1 ロレンスの〈生-政治〉
2 『息子たちと恋人たち』―登場人物の政治的寓意
3 アルヴィナとチッチョと旅芸人の一座―『失踪した女』の言説の政治学
(1)アルヴィナの政治的表象
(2)旅芸人の一座の寓意
4 言語の寓意―『カンガルー』の言説の政治的磁場
(1)求心力―ヘゲモニーとしての英語
(2)遠心力―英語の土着化
(3)言説の磁場の外へ
第四章 ロレンスと歴史意識―アジア・フォービアとダーウィニズム
1 現実感をめぐって―ロレンスと生の直接性
2 『アーロンの杖』のアジア・フォービアとその克服の論理
3 『セイント・モー』のテキストの亀裂
4 アジア・フォービアとダーウィニズム
5 生存競争から生の根源へ
6 社会ダーウィニズムと『白孔雀』の動植物の意味
(1)孔雀の寓意
(2)小動物たちのダーウィニズム
(3)階級闘争
7 『翼ある蛇』―世俗的国家に抗して
(1)神話の絶対化と相対化
(2)ポスト植民地主義的な手法としての自由間接話法
第五章 無名性
1 単独者と無名性
2 単独者の肖像
3 作家の無名性
4 『侵入者』―改作という技法
(1)神話という参照枠
(2)ヘレナ―夢想の言説への自己幽閉者
(3)言説の呪縛とその外部
(4)個人的営為としての創作をこえて
5 『ブッシュの少年』―共作という手法
(1)植民者のポストコロニアリズム
(2)宗主国文化と植民地文化を超えて
(3)言説の政治学
(4)脱欧入墺の言説―霊魂、精神、肉体をめぐって
(5)無場所を希求する無名の単独者の連帯
注
参照文献
あとがき
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