概要
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の背景や原因,疾患としての基礎的な知識,また診断を行ううえで最も重要な診断基準の捉え方や解釈の仕方を実際の症例を豊富に示しつつ解説するとともに,訴訟や裁判など,司法におけるPTSDの法的な判断と現状についても詳しく解説.医と法という両側面から今後の PTSD診断のあり方を問う.
目次
I PTSDと医療 1
1.「外傷後ストレス障害」概念の変遷 〈佐藤光彦 飯森眞喜雄〉 2
A.はじめに-PTSD概念の変遷を知っておく意義 2
B.PTSDの基本概念とその問題点 2
C.PTSD成立に至るまでの歴史的背景と経緯 3
1.器質因説と心因説 3
2.ヒステリーとの関連 4
D.米国におけるPTSD成立の契機と過程 5
E.その後のPTSD研究による概念の変化 6
F.おわりに-PTSD普及後の問題点 6
2.診断基準とストレス 〈大家尚文〉 8
A.両基準の特徴 9
B.ストレスとストレッサーとは 9
1.力学でのストレスと変形 10
2.生理学でのストレスとホメオスターシス 10
3.PTSDでのストレス 11
C.トラウマとは 12
D.PTSD発症の仮説 13
E.両基準での外傷体験の定義 13
1.暴露時の感情体験について 14
2.ストレッサーについて 14
F.ストレッサーの捉え方 15
3.外傷体験の把握 〈黒木宣夫〉 18
A.直接体験と外傷 19
B.訴訟事例提示-目に見えない体験が外傷体験とされた事例 20
事例1 強姦被害を受けたと主張し,PTSDと診断された事例 20
事例2 幻覚,妄想があるにもかかわらずPTSDと主張された事例 22
事例3 セクハラの事実そのものが曖昧な事案 24
事例4 わいせつ行為を受けたとして9カ月経過した後に提訴した事例 26
C.目に見えない外傷体験の把握 28
D.出来事との因果関係 29
1.PTSDの発症要因と個体差 29
2.PTSD発症と個体差との関係 31
3.PTSD発症と本人の脆弱性 32
4.精神科医によって診断に差異が生じる理由 33
トピック 米国退役軍人における外傷後ストレス障害の
法的側面および補償について 〈荒井 稔〉 35
4.心理テストの信頼性と妥当性 〈種市康太郎〉 37
A.心理テストとは 37
1.性格検査の種類 37
2.性格検査の種類と長所・短所 38
B.精神症状評価尺度とは 39
C.心理検査および精神症状評価尺度の信頼性と妥当性 40
1.信頼性とは 40
2.心理検査と臨床評価尺度の信頼性 41
3.妥当性とは 41
4.心理検査と臨床評価尺度の妥当性 42
D.PTSDを対象に使用される精神症状評価尺度 42
1.出来事インパクト尺度日本版 42
2.CAPS構造化診断面接尺度日本語版 42
E.PTSD診断の補助として使われる心理テストの特徴 43
F.PTSD診断における心理検査・臨床評価尺度の結果を判断する際の問題点 43
5.PTSDの鑑別診断 〈黒木宣夫〉 46
A.死別反応との鑑別 47
事例 目前で長男の死を目撃した事例 49
B.うつ病との鑑別 54
事例 バイクで走行中に大型車に巻き込まれる交通事故から
約8カ月後に自殺した事例 54
C.災害神経症,賠償神経症,人格障害との鑑別 58
事例1 偏った人格傾向や賠償神経症的傾向を有した統合失調症例 59
事例2 寝込んでいた時に交通事故に遭遇
-皮膚電気反射(GSR)を根拠にPTSDと診断された事例 61
D.交通外傷後の身体的愁訴の背景にある精神疾患との鑑別 63
1.F44 解離性(転換性)障害 63
2.F45 身体表現性障害 63
3.F68.0 心理的理由による身体症状の発展(従来の賠償神経症) 63
4.F68.1 虚偽性障害とZ76.5 詐病 64
事例1 傷害事件から5年経過した後にPTSD鑑定を希望して受診した事例 64
事例2 身体愁訴が強く自らPTSDではないかと来院した事例の見立てと鑑別 67
E.自らPTSDと訴えて受診した患者に関して 69
コラム 精神科病態からみたPTSD
-神経症水準の障害と精神病水準の障害 〈黒木宣夫〉 71
6.頭部外傷とPTSD 〈黒木宣夫〉 73
A.頭部外傷に絡んだ精神疾患 73
1.急性期 73
2.慢性期(後遺障害の固定期) 74
B.頭部外傷後の愁訴-脳の実質に器質的損傷の明白な群- 74
1.器質損傷群 74
2.非器質損傷群 75
C.頭部外傷(交通外傷)訴訟事例とPTSD診断 76
事例1 頭部外傷後錯乱,健忘,解離,転換症状を呈した事例
(O地裁PTSD判決) 76
事例2 頭部外傷後10カ月して精神科受診した訴訟事例(K地裁) 78
7.PTSDの治療法 84
A.一般的な治療法 〈藤原修一郎〉 84
1.はじめに 84
2.早期の介入 84
3.初回の相談,面接 85
4.治療方法の基本,支持的精神療法 86
5.認知療法 86
6.認知行動療法 87
7.EMDR(Eye Movement Densensitization and Reprocessing
眼球運動による脱感作と再処理 87
8.心理教育 87
9.集団療法,入院治療 88
10.年齢に応じた治療的配慮 88
B.薬物治療 〈野村総一郎〉 90
1.PTSDへの薬物療法は何を目的とするか 90
2.急性期のPTSD症状に対する薬物療法 91
3.慢性期症状,社会適応,再発予防などへの薬物効果 92
4.併発症への薬物効果 92
5.PTSDの薬物療法アルゴリズム 93
8.PTSDと損害賠償 〈黒木宣夫〉 95
A.損害賠償におけるPTSDの診断ポイント 95
B.損害賠償・補償の立場からみたPTSD診断に関する留意事項 99
C.補償・賠償・訴訟事例に関する具体的な判断方法と留意点 100
1.留意点 100
2.患者全般について 101
3.医師診断に関して 101
D.臨床医の判断との相違 102
9.PTSDと労災認定 104
A.PTSDの診断のもとに労災請求された事例 〈黒木宣夫〉 104
1.請求事案の診断名 104
2.請求された外傷体験の内容 104
B.労災認定の判断指針による心理負荷強度 〈黒木宣夫〉 108
1.心理的負荷による精神障害に係わる業務上外の判断指針 108
事例1 作業中に手を巻き込まれた事例 111
事例2 勤務中に強盗に襲われた事例 112
C.労災医療と後遺障害の等級認定の判断 〈黒木宣夫〉 112
1.労災保険法による治癒と症状固定 112
2.治療後の後遺障害の等級認定 113
D.ストレス障害と後遺障害の労災認定 〈小西博行〉 113
1.業務上の疾病の認定 114
2.ストレス障害の労災認定 115
3.後遺障害の認定について 116
トピック 「精神障害・自殺の労災認定に関する意見書」(過労死弁護団)に
関する精神医学的見解 〈黒木宣夫〉 126
10.交通事故後のPTSDと自賠責保険 〈八島宏平〉 129
A.交通外傷の具体的把握 129
1.はじめに 129
2.自賠責保険の概要 129
3.自賠責保険の支払対象 130
4.自賠責保険への請求手続きと障害評価 130
B.自賠責保険における新認証システム 132
1.自賠責保険と労災保険の関係 132
2.労災保険の評価とその改正 132
3.労災保険と自賠責保険の相違 133
4.自賠責保険の障害評価 135
5.自賠責保険の調査方法 137
6.自賠責保険での実施時期と審査実績 138
11.精神障害の適切な療養期間 〈黒木宣夫〉 139
A.調査対象と調査方法 139
B.調査結果 139
1.急性期から病状が家庭内で安定するまでの適切な療養期間 139
2.リハビリ勤務が可能となるまでの適切な療養期間 139
3.症状固定時期 140
C.精神科責任者の療養期間に関する意識調査 141
1.統合失調症 141
2.うつ病 142
3.反応性うつ病 142
4.神経症 142
5.災害神経症 143
6.PTSD 143
II PTSDと司法 145
12.PTSDの法的諸問題 〈杉田雅彦〉 146
A.PTSD概念 146
1.PTSDとは 146
2.PTSD報道 147
3.「外傷体験」 148
4.PTSD裁判 150
5.正しいPTSD判決の重要性 150
B.PTSD民事裁判(交通事故) 150
1.「横浜判決」の出現 150
2.横浜地裁平成10年6月8日判決 151
3.東京地裁平成14年7月17日判決 152
C.混迷を深める「PTSD概念」からの脱却の兆し 154
1.民事交通判決の傾向 154
2.PTSD裁判の減少傾向 155
3.法的判断基準等 155
D.「PTSD交通事故以外」の民事裁判 157
E.PTSDと刑事事件 158
1.刑事事件判決 158
2.刑事事件の判決傾向 159
3.PTSD逮捕事件 160
4.PTSDを傷害罪として立件すべきではない 160
5.弁護側でPTSDと主張する事案 161
6.PTSDと「傷害罪」 161
7.PTSDと「致傷罪」 161
F.PTSDと診断書 162
1.精神科医のPTSD診断基準 162
2.医師の診断書の法的重要性の認識欠如 162
G.PTSDの判断は慎重に 163
1.PTSD半数は別症例 163
2.PTSD症状の消失時期 163
H.PTSD事案の問題点等 164
1.PTSDの問題点 164
2.「医」と「法」の連携 164
3.「心の傷」の正当な評価 164
4.精神科医の自覚 165
5.信頼に足る鑑定制度の確立 166
13.PTSDおよび周辺疾患に関する損害論 〈山口斉昭〉 176
A.PTSDの認定方法に関する議論 176
1.PTSDに対する疑問 176
2.杉田説 177
3.学説による受容 177
4.判例における受容 177
B.損害算定に関する議論 177
1.「心の傷」に対する評価の必要性の認識 177
2.裁判例におけるPTSD 178
3.PTSD肯定判決における損害の評価 179
4.PTSD否定判決における損害の評価 179
C.検討 179
1.PTSD議論の背景 179
2.PTSDの「功」 180
3.PTSDの「罪」と学説の位置づけ 180
4.裁判例の評価 181
5.後遺障害としての認定の方向性 181
D.実務への指針と今後の課題 181
1.PTSDへの該当性判断について 181
2.後遺障害等級について 181
3.素因減額について 182
4.周辺の精神疾患について 182
5.今後の課題=労働能力喪失期間と「治療」の可能性について 183
索 引 185
こんにちは ゲスト様
- 検索機能で欲しかった書籍を
- 書籍・雑誌検索
- アカデミック版などお得に
- ソフトウェア
- 記念品やお土産に最適
- 岡山大学オリジナルグッズ
- お得で旬な商品をご紹介
- メールニュース掲載商品
- 大学生協の医療書専門店
- IKEI メディカルブックストア