概要
ときによろこび、ときにかなしむ。落胆し嘆いてみたかと思えば、超然と諭す――。温故知新、巧言令色など、なじみの四字熟語が生まれた背景には、孔子と弟子達の悲喜こもごもがつまっていた。四字熟語に関連したさまざまなエピソードを紹介しつつ、親しみやすい文体で論語を読み解く。
目次
一、学問
温故知新(おんこちしん) ―― 学問のすすめ
切磋琢磨(せっさたくま) ―― 打てば響く太鼓
博聞約礼(はくぶんやくれい) ―― 化粧の総仕上げ
下学上達(かがくじょうたつ) ―― 孔子の吐いた弱音
過庭之訓(かていのくん) ―― 不肖の息子
道聴塗説(どうちょうとせつ) ―― 耳から口に抜ける
二、人生
川上之嘆(せんじょうのたん) ―― 時間よ止まれ
五十知名(ごじゅうちめい) ―― 孔子の生涯
富貴浮雲(ふうきふうん) ―― 武士は食わねど……
軽裘肥馬(けいきゅうひば) ―― 金持ちの弟子
無知之知(むちのち) ―― あの世のことはわからない
三、教訓
暴虎馮河(ぼうこひょうが) ―― 暴れん坊の弟子
犬馬之養(けんばのよう) ―― 親は家畜か?
巧言令色(こうげんれいしょく) ―― 世渡り上手
剛毅木訥(ごうきぼくとつ) ―― 男は黙って……
文質彬彬(ぶんしつひんぴん) ―― 理想的な人の姿とは
四、政治
先難後獲(せんなんこうかく) ―― 為政者の心得
牛刀活鶏(ぎゅうとうかっけい) ―― デートのお断り
用行舎蔵(ようこうしゃぞう) ―― 潔い身の処し方
草偃風従(そうえんふうじゅう) ―― 民心のありどころ
五、人物
三徳兼備(さんとくけんび) ―― 孔子の人となり
益者三友(えきしゃさんゆう) ―― 友を選ばば
歳寒松柏(さいかんしょうはく) ―― 真価が問われるとき
朽木糞牆(きゅうぼくふんしょう)―― 昼寝の代償は大きかった
おわりに
四字熟語索引
論語は、紀元前五世紀頃生きた孔子とその弟子達の言行録である。孔子の死後、弟子たちによって編纂されたもので、爾来、二千数百年もの長きにわたって、中国およびおsの影響を受けてきた周辺諸国の人々の精神の糧であり続けた。
もちろん論語の章句のなかには、現代からすると明らかに時代遅れの感がして、承服しかねるものもあるにはあるが、多くは、いまも輝きを失っていないすばらしいものである。物質的な豊かさに反比例するように、心の豊かさを失いつつある昨今、人間の真の生き方について深い示唆を与える論語は、ますますその輝きを発揮してきているのである。
(中略)
論語について書きたいけれど、どういう切り口にするか悩んでいた私は、「これだ!」と思った。論語について書いた本は世に数々あれど、四字熟語に的を絞って、そのから論語を読み解いた本はまだないのではないか、と思い至ったのである。それからというもの、筆の運びがスイスイ軽くなったのは言うまでもない。
そういうわけで、この本では、四字熟語を手がかりにして論語を読み解くことを基本に据えた。そして、四字熟語に関連した章句にみえる有名な文句や二字熟語があれば、それもあわせて示した。さらに、論語を典拠とする人名、会社名、学校名、その他各種の用語にも適宜触れていくことにした。(「おわりに」より一部抜粋)
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