概要
柳田国男の時代から、民俗学における文献史料の扱いについては様々に議論がなされてきた。「口頭伝達を重視する民俗学、文献を重視する歴史学」という固定観念は崩れつつあるものの、明確な方法論は未だ打ち出されていない。フィールドワークによる生の資料と、文字で伝えられた資料両者の扱いかたに着目し、新たな研究方法について論じた意欲作。
目次
はじめに -生活の中の文字-( 笹原亮二)
第一章 「口頭伝承と文字文化」の位相
〈声〉からみた文字
─日本列島における歴史と民俗の領域から─( 小池淳一)
民俗学と資料 (笹原亮二)
第二章 メディア
疫病と呪符 (大島建彦)
狐狸の書・神々の帳面 ─書記行為の民俗をめぐって─( 小池淳一)
奥会津の番匠巻物 ─系譜・由来・呪い歌─( 宮内貴久)
近世の易占書 ─士君子の易・市民の易と疾病・祟り・米相場─ (井上智勝)
第三章 地域社会
近世後期村役人にみる文字文化と口頭伝承
─甲斐国巨摩郡河原部村平賀秀長『拾集録』『後続日記』を素材に─( 山本英二)
巻物のある風景
─三匹獅子舞の上演に用いられる文書類の諸相─( 笹原亮二)
近世における地域の伝説と旅行者
─「西国順礼略打道中記」を中心に─ (青柳周一)
第四章 歴史
「浮鯛抄」をめぐる文字と口頭の伝承( 川島秀一)
「近世的」職人由緒書の形成と展開
─髪結職由緒書を例として─( 榎美香)
楯無鎧をめぐる伝承の実体化( 西田かほる)
書きとめられた伝説
─地誌・郷土誌と伝説集─ 久野俊彦)
第五章 「口頭伝承と文字文化」の周辺
『コーラン(クルアーン)』とイスラム共同体(ウンマ)
─儀礼的音声言語の社会的機能に関する言語情報学的考察─( 西尾哲夫)
疫神の詫び証文の伝播分布に関する情報学的アプローチ
─計量文献学およびGISを用いて─( 小田淳一)
「日本語の乱れ!?考」
─現代の「若者言葉」の動態をめぐって─( 長崎伸仁)
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