有機分子でありながら、一重項と三重項の２つの電子状態をとり得る、ユニークな化学種カルベンは、触媒配位子への利用や磁性材料への期待など、近年新たな展開を見せている。その化学の最前線を、研究手法、電子状態と構造の関係、多様な反応、今後の発展まで、系統的に解説した初の成書。

Ⅰ　研究法
　　Ⅰ-1　カルベンの前駆体／Ⅰ-２　カルベンの発生条件と反応する多重度
　　／Ⅰ-３　生成物分析による相対的反応性の決定／Ⅰ-４　分光学的研究
　　法／Ⅰ-５　電子スピン共鳴分光法／Ⅰ-６　理論計算

Ⅱ　一重項―三重項相対安定性と構造の関連
　　Ⅱ-１　計算化学による一重項－三重項エネルギー差の理論的予測／Ⅱ
　　-2　一重項－三重項エネルギー差の実験的評価

Ⅲ　反応１――付加、挿入、引き抜き
　　Ⅲ-１　アルケンとの反応／Ⅲ-２　C-H結合との反応／Ⅲ-３　C-C結合と
　　の反応／Ⅲ-４　ヘテロ原子を含む化合物との反応／Ⅲ-５　酸素との反
　　応

Ⅳ　反応２―転位
　　Ⅳ-１　1,2-転位／Ⅳ-２　Wolff 転位／Ⅳ-３　1,2-転位を利用する高ひず
　　み化合物の合成／Ⅳ-４カルベン－カルベン転位／Ⅳ-５　分子の空洞内
　　（分子フラスコ中）での転位反応の研究／Ⅳ-６　フラグメンテーション

Ⅴ　新しい展開
　　Ⅴ-１　カルベン反応における溶媒効果／Ⅴ-２　励起カルベンの反応／
　　Ⅴ-３　求電子的カルベンと求核的カルベン／Ⅴ-４　安定な一重項カル
　　ベン／Ⅴ-５　三重項カルベンの安定化／Ⅴ-６　高スピンポリカルベン
　　――有機磁性材料への展開